僕と済州島の物語

2002年に済州島でホームステイ、 2005年に済州島に留学、2013年に済州島で国際結婚、2015年に済州島で長男誕生。 そんな僕と済州島の物語です。

【小説】済州島留学物語

済州島留学物語 第30話【冬3】

携帯メールの受信を知らせる着信音で目が覚めた。 9時過ぎだ。珍しく遅くまで眠ってしまった。発表資料の準備のせいで疲労がたまっているのかもしれない。 『ユウゴさん! わたし、合格しましたよ! 来年、日本に行きます』 ミソだった。 しばらく携帯を握…

済州島留学物語 第29話【冬2】

3日後、外国文化交流イベントの発表テーマ決めのため、僕ら日本グループは図書館のラウンジに集まった。 「じゃあ、あたしからアイデアを話すよ。あたしが考えたのは日本人と韓国人の考え方の違い。例えば、『好きな動物』とか『憧れる職業』みたいな簡単な…

済州島留学物語 第28話【冬1】

「国際課主催のイベント……?」 ウニョンさんから手渡された案内を一目見て僕らは顔を上げた。僕、サチコ、タクヤ、ナオの4人は国際課の応接室にいた。 「そう。国際課主催で、『外国文化交流イベント』を行います。留学生が中心になって、自分の国を紹介す…

済州島留学物語 第27話【秋8】

月が変わり迎えた11月最初の朝、少し肌寒さを感じた。 冬が近づいている。 僕は薄手のジャンパーを羽織って急いで寄宿舎を出た。 大事な1日が始まる。韓国語能力試験の合格発表日であり、またミソの面接試験の予行練習を行う日でもあった。 午前中に社会…

済州島留学物語 第26話【秋7】

案内された部屋は2階のこざっぱりした部屋だった。大きなダブルベッドが一つ、キッチンや冷蔵庫も備え付けられていた。そして何より、窓の外はオーシャンビューだった。 「ソンウがこんな素晴らしいペンションの息子だったなんてうらやましいよ」 思わずた…

済州島留学物語 第25話【秋6】

牛島(ウド)に到着するとすぐに昼食を食べることにした。 「皆さん、今日は、ぼくの故郷の牛島に遊びに来てくれてありがとうございます。昼食を食べたあとに、牛島の観光地をご案内します。まずクイズです。牛島はなんで牛島っていうかわかりますか?」 船…

済州島留学物語 第24話【秋5】

10月下旬の週末。僕はソンウと一緒に寄宿舎を出発し、市外バスターミナルに向かっていた。午前9時過ぎ。待ち合わせの時間まではだいぶ余裕があったが、早めに着いて、バスや船の中で食べるおやつを準備しようと話していたのだ。 「ユウゴ、どうしよう……。…

済州島留学物語 第23話【秋4】

「僕だって今日、こうしてソンウとユウゴを会わせたのにはちゃんとした理由があるんだ。もちろんソンウの恋の件もあるけど、2人は同い年だし、仲良くなってもらいたかったんだ。ソンウは獣医学科の後輩で長く見てきたし、ユウゴのことはウニョンからもよく…

済州島留学物語 第22話【秋3】

「今度うちで日本のアニメを見るんだけど一緒に見ないか」 そう声をかけてくれたのは国際課のウニョンさんの彼氏であるスンウォン兄さんだった。当然、タクヤたちにも声をかけたのだろうと思っていたが、どうやら僕だけに声がかかったようだ。韓国語能力試験…

済州島留学物語 第21話【秋2】

長かった試験が終わり、ナオは夜の便で済州島に戻った。サチコは彼氏のところへ、僕とタクヤは田中先輩と合流し、「試験お疲れ様会」を開催することになった。翌日の午前の便で済州島に戻るつもりだ。 「お疲れー!」 僕ら3人は、田中先輩が案内してくれた…

済州島留学物語 第20話【秋1】

僕らを乗せた飛行機は、ゆっくりとソウルの金浦(キンポ)国際空港に着陸した。 隣で寝息を立てていたタクヤが、「もう着いたのか、はやっ」と言って大きなあくびをすると、後ろの座席に座っていたナオがため息をついた。 「早すぎですよね。単語覚えようと…

済州島留学物語 第19話【タイムカプセル⑤】

済州島徒歩1周5日目 (表善(ピョソン)~済州市役所前():約62km) 朝のまぶしい光で目を覚ました。疲労を伴った身体は今日が昨日の続きであることを物語っていた。2005年8月13日午前7時。済州島徒歩旅行5日目。僕は表善のヨンジュンの家にいた…

済州島留学物語 第18話【タイムカプセル④】

済州島徒歩1周4日目 (南元(ナムォン)~表善(ピョソン:約12km) 影響されすぎかな。そんなことを思いながら『レ・ミゼラブル』を購入した僕は、図書委員らしく本の世界にのめり込んだ。新発見だった。漫画とは違い自分のイメージで世界を構築できるし、…

済州島留学物語 第17話【タイムカプセル③】

済州島徒歩1周3日目 (中文(チュンムン)~南元(ナムォン):約31km) それでも僕は変わりたかった。高校に入学するまでの春休みの間はギターの練習ばかりをしていた。高校に入ったら立花君と共にギター部に入部するつもりだった。とはいえ僕は指先が不…

済州島留学物語 第16話【タイムカプセル②】

済州島徒歩1周2日目 (翰林(ハンリム)~中文(チュンムン):約46km) 僕ら一家は都会へ引っ越した。鹿児島で生まれ育った祖父が亡くなってから2年が経っていた。父の高校時代の友人が都内で会社を立ち上げることになり、もともと都会暮らしを望んでい…

済州島留学物語 第15話【タイムカプセル①】

タイムカプセル 済州島徒歩1周1日目 (済州市役所前~翰林(ハンリム):約29km) 1983年、僕は鹿児島県で生まれた。痩せた今の僕の体形からは想像できないけれど、4000グラムを超える大きな赤ちゃんだった。予定日は2週間も過ぎていた。 生まれ…

済州島留学物語 第14話【夏5】

僕は冷房の効いた図書館の机に朝から晩までかじりついていた。旅の道中で撮った写真は、コメントと共にSNSにアップしていたため、僕が歩いて済州島一周に挑戦したことはすぐに知れ渡った。また、ヨンジュンが、 『ユウゴさん、あの時はお会いできてうれし…

済州島留学物語 第13話【夏4】

「はい、起きなさい。朝ごはん」 おばあちゃんの上手な日本語で起き上がった。時間は午前7時半。寝ぼけ頭に、一瞬、ここがどこなのか混乱したが、携帯のすぐ隣にあった地図を見て思い出した。全身は筋肉痛で身体は思うように動かない。 朝食はたくさんのお…

済州島留学物語 第12話【夏3】

歩き続ければ辿り着けることを確かめたい。前に進むということを確かめたい。僕が選んだのは東方向から一周を回るコースだ。そしてそれは春に訪れた城山日出峰(ソンサンイルチュルボン)のほうに向かっていくコースでもある。城山日出峰までは車で1時間程…

済州島留学物語 第11話【夏2】

図書館は3階建てだ。座席数の多い1階と比べ、2階と3階は書架のスペースがメイン。普段は足を運ぶことがあまりなかったが、夏休みに入り、ゆっくりと見学してみると、まるで特等席のような席を発見した。それは2階の北側に面した席で、目の前のガラス窓…

済州島留学物語 第10話【夏1】

分厚い雲に覆われた空は、静かに大地を濡らしていた。 期末試験を終えた僕は、折り畳み傘をカバンから出し、図書館に向かった。6月中旬。どんよりとした空模様とは対照的に僕の心は晴れ渡っていた。いよいよ2カ月半にも及ぶ夏休みが始まるのだ。 ロックミ…

済州島留学物語 第9話【春8】

「おまえ、全然食ってないだろ?」 そして、新しい皿と箸を持ってきて、どこからか肉と野菜をかき集めてくれた。 「ありがとうございます」 「ちょっとあっちで休もうぜ」 僕らは庭に1本だけ聳え立っていた樫の木の下に腰掛けた。 「こういう集まりは初めて…

済州島留学物語 第8話【春7】

社会学の授業は相変わらず理解できないまま進んでいた。学生新聞記者の女子学生と同じ授業は2つあった。当初、筆記の手伝いをしてくれていたが、彼女が自分の学習に集中できなくなると思い、「もう大丈夫です」と伝えたのだが、その伝え方がまずかったのか…

済州島留学物語 第7話【春6】

考え事をしていたせいか、思ったより早く頂上に到着した。 「ユウゴ! 男3人で写真撮ろうぜ!」 二日酔いなどどこ吹く風。タクヤは頂上に到着してすっかり元気になったようだ。 「ユウゴ、どうしてそんなに表情が暗いんだい?」 スンウォン兄さんが心配そう…

済州島留学物語 第6話【春5】

11時過ぎ、僕らは咸徳(ハムドク)海水浴場に到着した。まだ4月下旬だったので、そこまで人は多くなかったが、青い空を反映してギラギラと輝く翡翠色の海と、城塞のように陸に連なる玄武岩の光景は、それだけで非日常的だった。 「さすがに入れないけどね…

済州島留学物語 第5話【春4】

国際課のウニョンさんから、日本出身の学生を対象にした日帰り済州島ツアーを企画してみるという話があったのは、桜がほぼ散った4月中旬ごろだった。 「済州島ってちょうど今ごろの季節が一番美しいの。韓国人の友だちも連れていくから、みんなで一緒に行き…

済州島留学物語 第4話【春3】

2005年。その年は日韓国交正常化40周年を記念して「日韓友情年」とされた年だった。2002年に日韓ワールドカップ共催があり、日本国内において韓国に対する関心が高まると、それはそのまま冬ソナブームを始めとする韓流ブームにつながった。 他方で…

済州島留学物語 第3話【春2】

僕は日本の大学で社会学が専攻だったため、留学先でも社会学科に在籍していた。外国人学生を対象にした韓国語の授業は週に一度だけだったので、僕が留学先で受講する授業のほとんどが社会学だ。ただ、日本ではバイトが忙しく、授業に出てもうとうとしている…

済州島留学物語 第2話【春1】

「ご存じのとおりここは島だし、日本人の学生は少ないの。だからわたしもできるだけのことはする」 大学の国際課からやってきたウニョンさんは早歩きで階段を上りながら、流暢な日本語を話した。 「わたしが日本に留学していたころは、日本人の友だちが少な…

済州島留学物語 第1話【越境】

僕を乗せた飛行機はいつの間にか国境を越えていた。 夜勤が続いていたせいだろうか。離陸とともに眠りに落ちたようだ。 握っていた地図が通路に滑り落ち、背の高いスチュワーデスの女性が拾い上げると、微笑みながら何か僕に声をかけてきた。韓国語だ。そし…